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クラウド・バイ・デフォルトとは?中小企業が「まずクラウド」で考える理由と始め方

中小企業がクラウド・バイ・デフォルトを実践する理由と始め方を示した記事サムネイル

社内のファイルサーバーが古い。担当者が辞めると設定が分からない。外出先から必要な資料を見られない。バックアップを取っているつもりだが、復元したことはない。

こうした課題がある中小企業に知ってほしい考え方が、クラウド・バイ・デフォルトです。

難しいIT用語に見えますが、意味はシンプルです。新しいシステムを導入したり、古い仕組みを更新したりするときに、最初から自社サーバーありきで考えず、まずクラウドで実現できないか検討する。これが基本です。

ただし、「何でもクラウドへ移せばよい」「クラウドなら自動的に安全」という意味ではありません。この記事では、中小企業がこの考え方をどう使えばよいか、具体的な判断基準と始め方まで整理します。

クラウド・バイ・デフォルトとは

クラウド・バイ・デフォルト(Cloud by Default)とは、情報システムを新しく導入・更新するときに、クラウドサービスを第一候補として検討する考え方です。

ポイントは「クラウドに決める」ではなく、最初にクラウドを候補に入れて比較することです。

  • クラウドで目的を達成できるか
  • 自社でサーバーを持つ場合と比べて、費用と運用負担はどうか
  • 扱う情報に必要なセキュリティを確保できるか
  • 障害やサービス終了の際に、業務を続けられるか

比較した結果、オンプレミス(自社内に置くサーバー)や専用システムを選ぶこともあります。つまり、クラウド・バイ・デフォルトは「クラウド一択」ではありません。

日本政府も「クラウドを第一候補」にしている

日本政府は、政府情報システムについてクラウドサービスの採用をデフォルト、つまり第一候補とする方針を示しています。同時に、単にクラウドを使うのではなく、目的やリスクに合わせて適切に、スマートに利用することも求めています。

この政府方針が、そのまま民間の中小企業に義務として適用されるわけではありません。ただ、「サーバーを買うことから考えるのではなく、目的から選ぶ」という判断の順番は、中小企業にも有効です。

デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」↗

中小企業に向いている理由

1. 専任のIT担当者がいなくても運用しやすい

自社サーバーを持つと、機器の交換、OSの更新、故障対応、バックアップ、停電対策などを自社側で管理する必要があります。担当者が1人しかいなければ、その人が休んだり退職したりしたときに止まりかねません。

クラウドサービスなら、サーバー設備の保守やサービス基盤の更新を事業者側が担います。自社の作業がゼロになるわけではありませんが、機械を守る仕事から、アカウントと業務を管理する仕事へ負担を移せます。

2. 小さく始めて、必要に応じて増やせる

オンプレミスは、数年先を予測して機器を購入するため、最初の投資が大きくなりがちです。クラウドは月額制や利用量に応じた料金が多く、少人数から試しやすいのが特徴です。

一方で、使い方を管理しなければ月額費用が積み上がります。初期費用が小さいことと、総額が安いことは別です。導入前に3年間の総費用で比較してください。

3. 災害や外出時にも業務を続けやすい

事務所のサーバーだけにデータがあると、火災、浸水、停電、機器故障の影響を直接受けます。適切に設計されたクラウドサービスなら、別の場所から業務を再開しやすくなります。

ただし、インターネット回線が止まった場合の代替手段や、重要データのバックアップは別途必要です。「クラウドにあるからBCPは完成」とは考えないでください。

まずクラウドを検討しやすい業務

現在の状態 検討しやすいクラウド 期待できる変化
共有フォルダが社内PCやNASだけにある クラウドストレージ 社外からの利用、版管理、共有権限の整理
メールや予定表が個人ごとに分かれている グループウェア 予定・連絡先・会議情報の共有
顧客情報をExcelで個別管理している 顧客管理・営業管理サービス 対応履歴の共有、担当者依存の軽減
請求書や経費処理を紙で回している クラウド会計・経費精算 転記作業の削減、処理状況の可視化
バックアップが担当者任せになっている クラウドバックアップ 自動化、事務所外へのデータ保管

最初から基幹システム全体を移す必要はありません。影響が限定され、効果を確認しやすい1つの業務から始める方が現実的です。

クラウドに向かない場合もある

次のような場合は、オンプレミスやクラウドとの併用を検討します。

  • 工場設備など、インターネット接続なしで動かす必要がある
  • 通信の遅延が業務や安全性に大きく影響する
  • 契約や業界規制により、データの保存場所・管理方法が指定されている
  • 長期間使う特殊な機器と、既存システムが密接につながっている
  • サービス停止時に許容できる時間が非常に短い

この場合も、「クラウドか自社サーバーか」の二択ではありません。重要部分は社内に残し、メール、ファイル共有、バックアップなどからクラウド化する併用型も選べます。

「クラウドだから安全」は間違い

クラウド事業者が守る範囲と、利用企業が守る範囲は異なります。サービスの基盤が堅牢でも、社員のパスワードが漏れたり、退職者のアカウントが残っていたり、共有設定を誤ったりすれば情報は漏えいします。

IPAの中小企業向けガイドラインも、事業者の対策を確認すると同時に、利用者である自社の役割と責任を把握するよう求めています。

IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」↗

最低限、導入前に確認する7項目

  1. 多要素認証を使えるか — パスワードだけでログインさせない
  2. アカウントを人ごとに分けられるか — 共通IDを使い回さない
  3. 権限を分けられるか — 全員を管理者にしない
  4. 退職・異動時の手順があるか — 利用停止とデータ引き継ぎを忘れない
  5. バックアップと復元方法が明確か — 復元テストまで行う
  6. データを書き出せるか — 解約や乗り換えに備える
  7. 障害・事故時の連絡先があるか — サポート範囲と対応時間を確認する

パスワード管理については、おすすめのパスワード管理ツール7選も参考にしてください。

30日で始める、現実的な進め方

1週目:使っているシステムとデータを書き出す

難しい台帳は不要です。まず、業務名、利用者、保存している情報、担当者、止まった場合の影響を1枚にまとめます。

2週目:対象を1つだけ選ぶ

「困っている」「毎週使う」「止まっても直ちに会社全体へ影響しない」の3条件に合う業務を選びます。共有ファイル、予定表、問い合わせ管理などが候補です。

3週目:2〜3サービスを同じ条件で比較する

月額料金だけでなく、多要素認証、権限管理、データ出力、バックアップ、サポート、解約条件を比較します。販売代理店や制作会社に任せる場合も、契約名義と管理者アカウントは自社で持ってください。

4週目:少人数で試し、手順を残す

いきなり全社導入せず、2〜5人で試します。ログイン方法、日常操作、トラブル時の連絡先、退職時の処理を1ページにまとめてから利用範囲を広げます。

Webサイトの契約名義や管理者アカウントの整理については、中小企業の社長のためのWordPress 基礎の基礎でも具体的に解説しています。

経営者が決めること、専門家に任せること

経営者・社内で決める 専門家に相談できる
何の業務を改善したいか サービスや構成の比較
どの情報を扱うか 移行方法とセキュリティ設計
止まった場合、何時間まで許容できるか バックアップ・復元方法
誰が管理責任者になるか 権限設定、ログ、監視の設定
月額と3年間の総額をいくらまで出せるか 契約・解約・データ移行条件の確認

専門家に任せる場合でも、「全部お任せ」で管理者アカウントまで渡さないでください。最終的な契約名義、管理者権限、データの所在を自社で把握しておくことが重要です。

まとめ

  • クラウド・バイ・デフォルトは、システム導入時にクラウドを第一候補として比較する考え方
  • 「全部クラウドへ移す」「クラウドなら必ず安く安全」という意味ではない
  • 中小企業では、専任担当者への依存を減らし、小さく始めやすい点が大きな利点
  • 安全性は事業者任せにせず、多要素認証、権限、退職者対応、バックアップを自社で管理する
  • 最初は影響の小さい業務を1つ選び、少人数で試す

クラウド化の目的は、最新のITを使うことではありません。担当者が変わっても止まらず、必要なときに改善できる会社の仕組みをつくることです。

自社のどの業務から見直すべきか判断できない場合は、現在使っているシステムと困っている作業を1つずつ整理するところから始めてください。

※本記事は2026年9月時点の公的資料をもとに構成しています。クラウドサービスの機能、料金、契約条件は変更されるため、導入前に各社の最新情報をご確認ください。

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